販促の重要性と実施のポイント
販促は事業を成功させるために欠かせない要素です。まずは、販促活動がなぜ重要なのか、どのような目的をもって行うべきなのかを解説していきます。
■なぜ販促が必要か?
販促は「販売促進」の略で、ターゲットとなるユーザーにアプローチして商品やサービスの購入を促す取り組みを指します。販促には、広告やサンプルの配布、各種キャンペーンなど、さまざまな方法があります。
市場はたくさんの商品やサービスであふれています。そのため、どんなにいい商品やサービスでも知ってもらう機会がなければ売上にはつながりません。そして、そのような環境で自社や自店舗の商品・サービスを選んでもらうためにも、販促に取り組む必要があります。
販促と似たような言葉に「マーケティング」がありますが、マーケティングは販促よりもより広い意味をもつ概念です。市場調査や価格設定、宣伝活動など、商品やサービスを売るための幅広い取り組み全体を指します。他方、販促は購入を促すための施策のひとつであり、マーケティングのなかのひとつの手段として捉えられます。
■目的別販促の考え方
人がある商品やサービスを知ってから、購入に至るまでのプロセスは何段階かに分けられます。分類の仕方はいくつかありますが、たとえば以下のように分解できます。
【購買プロセスの例】
・認知:商品やサービスの存在を知る
・興味:その商品やサービスに興味をもつ
・検討:類似品と比較したり、ネット検索したりして情報を集める
・購入:その商品やサービスを購入する
・再購入:その後、同じ購買行動を繰り返す
販促を行う際には、「どの段階にいる顧客にアプローチをするか」を明確にすることが大切です。そうすることで効果的な販促方法を選びやすくなり、そのぶん結果も得られやすくなるでしょう。
新規顧客獲得の販促方法
新規顧客を獲得を目的とした販促では、先ほどの購買プロセスの「認知」「興味」「検索」の段階にいる顧客にアプローチをします。
新規顧客へのアプローチでは、販促のターゲット層を明確にすることが特に大切です。年齢、性別、職業、ライフスタイル、興味関心などのターゲットの情報をできる限り詳しく設定します。
そうすることで「その人に対してどんな販促をすれば購買につながるのか」がイメージしやすくなります。そのうえで、次に紹介するような販促を実施してみましょう。
■SNS販促
SNSを活用した販促は、多くの人に「認知」してもらい、さらには「興味」をもってもらうきっかけになります。
具体的には、ターゲットとなる顧客が利用しているSNSプラットフォームにお店の情報を投稿し、積極的にフォロワーを増やしていきます。
たとえば、飲食店であればお店の美味しい料理の写真や期間限定メニューを投稿することで、お客さまの興味をかきたてます。
また、美容室やサロンなら、スタイリストによるヘアスタイルのビフォーアフター、最新のビューティーケアの情報などを投稿します。SNSの投稿は費用をかけずに実施できるので、お店の魅力をどんどん発信していきましょう。
■無料体験サービス
無料体験サービスは、新規顧客に商品やサービスの魅力を実感してもらうための有効な手法です。
多くのサブスクリプションサービスが「初月無料」「30日間無料体験」などのキャンペーンを実施していることを考えれば、無料体験がいかに有効な販促策かがわかります。
それ以外にも、無料体験サービスの例としては以下のようなものが挙げられます。
・美容室において初回限定でトリートメントを無料提供する
・フィットネスジムでの無料トライアルや初回体験の実施する
・医療施設での無料カウンセリングや無料診断の提供する
・書店や文具店での試し書きや試し書き用紙の提供する
・美術館や博物館での無料入館日の設定する
・アウトドア用品店での無料レンタルサービスの提供する
■クーポン配布
新規顧客を呼び込むために、割引クーポンやサービス券を配布するのも効果的です。広告やチラシ、SNSなどでお店を認知してくれた人に対して、クーポンを配布することで最初の来店・購買を促します。
たとえば飲食店では初回来店時に使えるドリンク無料クーポンを配布することで、新規顧客にお店を試してもらいやすくなります。ネイルサロンなら、初回限定で使える割引クーポンを配布します。
なお、最近では紙のクーポンだけでなく、デジタルクーポンの活用も一般的になっています。紙のクーポンより手間も費用もかからないため、デジタルクーポンは中小規模の店舗でも利用しやすい販促といえるでしょう。
クーポンのデジタル化とは?中小規模でも簡単にデジタルクーポンを発行する方法
https://media.aupay.wallet.auone.jp/articles/894「デジタルクーポン」とはその名の通り、デジタル化されたクーポンのこと。これまでクーポンといえば紙で配布されるのが一般的でしたが、ペーパーレスの時代に突入し、効率化・コスト削減・環境保護の観点からデジタルクーポンが主流になりつつあります。 スマホひとつで何でもできる昨今、クーポンの在り方も変わってきています。特に店舗を運営している事業者にとって、デジタルクーポンは営業の強い味方になってくれるでしょう。 この記事では、デジタルクーポンのメリットやデメリット、中小店舗でもできるデジタルクーポンの発行方法などを紹介していきます。
リピーター獲得の販促方法
リピーター獲得のための販促は、すでに「購買」をした顧客に対してアプローチをします。一般的に、「新規顧客の獲得」と「既存顧客の維持」とでは、後者のほうが販促費用がかかりません(その差は数倍ともいわれます)。
また、「パレートの法則」でも知られるように、2割の上得意客が売上の8割を生んでいるということも決して珍しくありません。事業を安定的に続けるためにも、リピーターの育成は新規顧客獲得と同じぐらい重要です。
そして、リピーター育成をするうえでポイントとなるのが「接触頻度」です。人はたくさん見聞きしたものに対して、愛着を感じたり関係性を深めたりする傾向にあります。単純接触効果と呼ばれ、顧客との接触回数と売上には強い相関関係があるのです。接触頻度を高めるような販促を実施できれば、きっとリピーターの育成ができるはずです。
■メルマガ配信
メルマガはリピーター育成のための代表的な手段です。メールアドレスやSNSアカウントなど顧客の個人情報を得られれば、それ以降定期的にお店の最新情報やお得な情報を届けられます。
顧客とのコミュニケーションを継続的に行うことができ、リピート率の向上が期待できるでしょう。
もちろんメルマガにこだわらず、LINEの友だち登録やYouTubeのチャンネル登録、Facebookのフォローなど、顧客とつながれるツールにはいろいろなものがあります。ターゲットの嗜好やお店の特長に合わせて最適なものを選ぶようにしましょう。
■ポイントカード導入
ポイントカードやスタンプカードもリピーター獲得のための有効な販促です。お客さまは来店ごとにポイントやスタンプがもらえ、全部たまったら特典を受けられます。
台紙さえ用意すれば実施できる販促策なので、ポイントカードやスタンプカードは個人経営のお店などでも取り組みやすいのではないでしょうか。
また、ポイントカード制度を運用するうえでは、「短期間で特典を受けられるような仕組みにする」「薄くて丈夫な紙にして持ち運びしやすくする」などの工夫も大切です。
■会員制度の導入
会員制度を導入して、特別な割引や限定イベントへの招待など、会員に対してさまざまな特典を用意するのもいい方法です。
かつては「お客さまはみな平等」「客を差別してはいけない」という風潮もありましたが、最近ではお店のファンを育てるためにも優良顧客を優遇するお店が増えています。
そして「シルバー・ゴールド・ブロンズ」「松・竹・梅」「マスター・エキスパート・ビギナー」というように会員をランク分けするのもいいでしょう。ランクに応じて特典に差をつければ、ランクアップへのモチベーションをかきたてられます。
客単価アップのための販促方法
売上は「売上=客数×客単価」で計算でき、ここまでは主に客数アップのための販促策を紹介してきました。
続いて、売上を左右する大事な要素「客単価」を上げるための販促を解説していきます。
顧客一人当たりの単価を上げるための販促にもいろいろな方法があり、ちょっとした工夫で単価アップを図れます。次に紹介するような販促策を検討し、一人当たりの購買単価を上げましょう。
■クロスセル・アップセル戦略
クロスセル・アップセル戦略は、お店の収益性を高めるためにとても有効な戦略です。クロスセルとは、顧客が購入しようとしている商品に関連した商品やサービスを提案する販売手法です。
たとえば、顧客がシャンプーを購入しようとしている場合、同じシリーズのコンディショナーやトリートメントをすすめることがクロスセルです。顧客にとっては自分のニーズに合った商品を見つけやすくなり、お店側にとっては客単価・売上アップにつながります。
また、アップセルでは顧客が購入しようとしている商品よりも、高価で付加価値のある商品やサービスを提案します。スマホの買い替えを検討している顧客に対して、高性能な最新モデルをすすめることがアップセルになります。
クロスセルもアップセルも、提案するタイミングが重要です。お客さまとの接客を通じて、相手の抱えている悩みやニーズを見極め、それに対する答えとしてクロスセルやアップセルを提案しましょう。
■セットメニューやバンドル販売
セットメニューやバンドル販売は、顧客に複数の商品やサービスを一緒に購入してもらうことで、客単価を向上させる効果があります。
身近な例ではファーストフードのセットが有名です。ハンバーガー、ポテト、ドリンクをセットにすることで単価が上がり、割安感を演出することもできます。
そのほかにも、洋服売り場でよくみられる「靴下3つセットで500円」、文房具やノートがセットになった「新学期セット」などもセット販売・バンドル販売の好例です。顧客のニーズをしっかりと考慮し、便利な組み合わせでセット販売ができれば客単価アップが図れます。
■期間限定商品・サービス
期間限定の商品やサービスを提供することで、お客さまの購買意欲を喚起し、客単価をアップできます。季節やイベントに関連した商品やサービスを用意し、定番商品プラスαの購買につなげたり、プレミアム価格にして商品単価を上げたりします。
たとえば、クリスマスやハロウィンなどのイベント向けの商品や、夏場には涼しげなデザートやフードメニューを提供します。
なお、限定商品・サービスを販売する際には、事前告知や宣伝に力を入れましょう。SNSやメールマガジン、店舗のポスターなどでアピールし、お客さまにその存在を知らせることが大切です。
まとめ
販促は目的別に行うことが大切です。認知~購買~再購買のプロセスのうちどの段階の顧客をターゲットにして、なにを目的に販促を行うのかを明確にしましょう。
また、新規顧客獲得、リピーター獲得、客単価アップにバランスよく取り組むこととも大切です。お店の営業成績を分析しながら、弱点を補ったり、強みを伸ばしたりできるような販促戦略を考えましょう。