「オンライン」と「オフライン」は小売店販促で両輪の関係
販促は、大きくネットを通じた「オンライン販促」と、主に店頭で実施する「オフライン販促」に分けられます。オンライン販促は不特定多数にアプローチができ、逆にオフライン販促は既存顧客へのアピールにつながります。
この2つは両輪の関係にあり、実店舗をもつ小売店では、この両方にバランスよく力を入れ、販促効果の最大化を図ることが大切です。近年の顧客の購買行動は、ネットで下調べしてから実店舗で購入することも当たり前になってきています。
マーケティングでも、SNSやWebで情報発信して、得られた見込み客を実店舗に誘導する「O2O(Online to Offline)」の概念が提唱されています。
【小売店向け】オンラインの販促ツール
最初に代表的なオンラインの販促手法を3つ紹介します。
■Webサイト・ブログ
お店のホームページやブログは、広告では伝えきれない細かな情報を発信できるのが一番のメリットです。新商品の入荷情報、商品の紹介、お客さんの体験談、お店のこだわりなど、こまめに情報発信をしてお店の魅力をお客さまに伝えます。
さらに、SEO(検索エンジン最適化)を意識して、検索上位に自社サイトを表示できれば費用をかけずに多くの人にサイトを見てもらえます。
なお、小売店にはSEO業者からの営業電話が頻繁にあります。お店の評価を上げるため、やらせの口コミなどのGoogleが推奨していない手法を用いると、ペナルティを受けて回復できない場合がありますので、ご注意ください。
■SNS
FacebookやInstagramをはじめ、SNSはすでに店舗経営に欠かせない販促ツールのひとつになっています。多くの人が利用しているため、SNSを通じて販促を行うことでさまざまな人にリーチできます。
また、広告やDMなど従来の販促手法と異なり、お客さまと直接コミュニケーションがとれるのもSNSの魅力のひとつです。地道に情報を発信しアカウントのフォロワーや閲覧者が増えれば、費用をかけずにお店の認知度を上げられます。
■メールマガジン
メールマガジンもSNS同様、多くのお客さまに情報を発信できるツールです。キャンペーンや新商品、イベントなどを適宜メールで告知し、お客さまに再来店してもらえるようなきっかけづくりを行います。
メールマガジンには「テキスト形式」と「HTML形式」、2種類の送信方法があります。テキスト形式は文字情報のみを掲載可能で、容量が軽く、あらゆるデバイスで受信可能です。
一方、HTML形式はリンクや文字装飾などができる送信方式で、視覚的なアプローチができるぶん多くの情報を掲載できます。さらに、メールの開封やメール内リンクのクリック数を計測可能なのも特徴です。
なお、Webサイト・ブログやSNSと違い、メールマガジンは「すでにお店の存在を知っていて、サービスや商品を一度は利用したことがある人」が主な対象です。
Webサイト・ブログやSNSは新規開拓向け、メルマガは既存顧客のロイヤリティ化というように、目的別にオンライン販促を使い分けましょう。
【小売店向け】オフラインの販促ツール
続いて、店内で実施できる販促アイディアを紹介していきます。
■POPを掲示する
店頭に掲示されるPOPは、カードのような小さいものから、ポスターやのぼりといった大型のものまで様々なサイズが展開されています。お店の雰囲気にマッチしたPOPを選び、POPの内容も定期的に刷新するといいでしょう。
【POPの役割】
・パッケージだけではわからない商品・サービスの魅力を伝える(顧客が求める情報の開示)
・お店側が売りたい商品・サービスをお客さまに知ってもらう(店舗側が伝えたい情報の開示)
なお、POPを作成する際のポイントは「誰に向けてメッセージを発信するのかを明確にする」ことです。例えば、男性向けなのか女性向けなのか、若者かシニアかなど、伝いたい対象者によって使うべき言葉は異なります。お客さまの属性に合わせた情報発信を心がけましょう。
お客さまが抱える要望や悩みに寄り添ったメッセージをPOPで表現できれば、商品の認知につながり、「商品を手に取ってよう」「お店のスタッフに詳しく話を聞いてみよう」といった次なるアクションにつながります。
■旬をアピールする
スーパーや雑貨店、洋服店など、小売業では特に「旬を捉える」ことがとても大切です。いつも同じ商品やメニューが並ぶお店よりも、季節感あるお店のほうが、魅力的に映ります。
例えば、今が旬の野菜がどこよりも早く並ぶ八百屋さんを想像してみてください。お客さまからそのお店を見ると、「このお店はいつでも新鮮なものが並び、いつも新たな発見がある」となるはずです。
日本には四季折々のイベントや祭事がたくさんあります。それらを積極的に活用しながら、季節に沿った商品ラインナップやメニューを展開しましょう。安売り競争に陥りがちな小売業界だからこそ、お客さまに価格ではなく価値を伝えることが大切です。
【春のイベント】
・ひな祭り(3月3日)
・ホワイトデー(3月14日)
・花見
・ゴールデンウィーク
・子どもの日(5月5日)
・母の日(5月第2日曜日)
・父の日(6月第3日曜日)
【夏のイベント】
・梅雨
・七夕(7月7日)
・海開き
・夏休み
・お盆
・敬老の日(9月第3月曜日)
【秋のイベント】
・衣替え(10月1日)
・紅葉
・ハロウィン(10月31日)
・文化の日(11月3日)
・ボジョレーヌーボー解禁(11月第3木曜日)
【冬のイベント】
・お歳暮
・クリスマス(12月25日)
・年末年始
・節分
・バレンタインデー(2月14日)
ここに挙げたのはあくまで一例です。その時々に合った方法で季節感をアピールすれば、お客さまの再来店を促すことができ、リピーター育成につながります。
夏はお祭りや夏休みなど様々なイベントがありお出かけが多い季節。お店を経営している方にとって、この機会を活かさない手はありません。この記事では、夏の販促アイデア10選と称して、お店の集客術を紹介していきます。飲食店、美容院、ネイルサロン、雑貨店などなど。どの業種でも実践できる内容なので、ぜひ参考にしてみてください。
■大量陳列する
小売店では陳列の仕方も重要です。縦陳列やアイランド陳列、ジャンブル陳列など、陳列方法は多岐にわたり、商品に合わせた陳列方法を採用しましょう。なお、「陳列面(フェイス)の広さ」と「売上」は比例関係にあるといわれるため、売りたい商品の売り場を拡大することが陳列の鉄則といえます。
ちなみに、消費者の購買の多くは「非計画購買」(いわゆる衝動買い)といわれます。その割合は半5~9割にも上り、人は事前に買うものを決めてお店を訪れるというよりも、お店に入って知らなかった商品を目にして「これを買ってみよう」と考えるのです。
だからこそ、同じ商品や関連商品を一か所にまとめて並べる「大量陳列」を行うことで、視認率が上がり、購買率向上につながります。
【大量陳列に向いている陳列方法一例】
■アイランド陳列
壁や棚とは独立した場所に什器を設置する陳列方法。「島」のように販売スペースを設けるため、360度どの方向からも商品が見やすく、手に取りやすいのがメリット。売れ筋や季節商品などと相性のいい陳列手法。
■ジャンブル陳列
ワゴンやカゴに、商品を投げ込んで入れたように陳列する手法。ひとつの商品をあえて乱雑に積み上げて陳列をすることでボリューム感が出て、お買い得感を演出できる。セール品や特売商品などに適した陳列方法で、衝動買いやストック買いを誘発しやすいとされます。
■スロット陳列
商品を縦に大量に陳列する方法。棚の一部を外して、縦長の空間に並べられることが多い。ジャンブル陳列同様、特売品の陳列によく用いられます。
■クロスセル・アップセルを促す
クロスセルとは、お客さまに追加購入をすすめて売上アップを図るマーケティング戦略です。例えばアパレルショップでTシャツを選んでいるお客さまに対して、それに合うアウターもセットで提案するというのがクロスセルです。
アップセルは、お客さまがこれまで利用している商品よりも上位価格帯のものの購入を促すマーケティング戦略です。クロスセルが購入点数のアップにつながるのに対し、アップセルは客単価アップを狙います。
アマゾンや楽天など大手ECサイトで商品を選んでいる際、「よく一緒に購入されている商品」や「この商品を見ている人はこちらもチェックしています」という案内を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。要は、お店でもその提案を行うということです。
レジ周りに商品を並べる、まとめて購入すると安くなる「バンドル販売」を行うなど、クロスセルやアップセルの取り組みを行うことで売上アップが期待できるでしょう。
■店頭イベントを開催する
行ってみたい、参加してみたいと思ってもらえるような魅力的なイベントを企画できれば、新たな顧客獲得やリピーターの育成につながります。
店頭イベントの例としては、車販売店の無料試乗会、スーパーのマグロ解体ショーなどが代表的です。イベントをフックにしてお客さまに来店してもらい、売上アップを図ります。
【イベントの一例】
・モノづくりワークショップ
・オンライン講習会
・スタンプラリー
・商品やサービスの無料体験会
・お客さまやスタッフの交流会 など
「誰を呼ぶのか」「どのような目的で開催するのか」によっても、実施すべきイベントのコンテンツは異なります。イベントを企画する際には、目的意識をしっかりともち、企画から告知、実施まで計画的に進めることが大切です。
まとめ
商品やサービスを売るためのコツは「理由付け」です。今回ご紹介した販促手法はいずれも、お客さまに行動を起こしてもらうための理由をつくるものです。
POPで商品の価格が高い理由を説明する、旬をアピールして今買うべき理由をつくる、店頭イベントを実施してお客さまの来店理由を創出する。販促を通じて「お店に今来るべき理由」「今この商品を買うべき理由」をつくってあげるのです。
そうすれば人は動き、お店の売上アップにつながります。今回ご紹介した内容を参考に、ぜひお店でも販促を通じた理由づくりを実践してみてください。