中小企業のキャッシュレス決済導入率は80%
2021年11月の経済産業省の調査によると、中小企業におけるキャッシュレス決済の導入率は80%と高い割合を示しました。この調査は小売、飲食、宿泊、生活関連、娯楽の中小企業1,031社を対象にしています。
キャッシュレス決済の種類別導入率では、クレジットカードが63.3%、QRコード決済などのコード決済が55.6%、電子マネーが29.7%です。
8割の店舗でいずれかのキャッシュレス決済を導入されていて、クレジットカードとQRコード決済が主流になっています。
かつてはキャッシュレス決済導入といえば、全国チェーン店や大規模店舗が中心でした。しかし、2019年10月~2020年6月に行われた国の「キャッシュレス・ポイント還元事業」をきっかけに、中小店舗でもキャッシュレス決済の導入が進んでいます。
従来、中小店舗でキャシュレス決済の導入が進まなかったのは、決済端末や決済手数料の費用負担のハードルがあったためとされています。
この「キャッシュレス・ポイント還元事業」では、制度の対象となりうる中小店舗約200万店のうち、過半数となる約115万店が参加するなど、大きな成果をあげました。
決済端末の導入に対する補助金が出たり、開催期間中の決済手数料の一部を国が負担したため、多くの店舗でキャッシュレス決済の導入が進んだ経緯があります。
政府目標のキャッシュレス決済比率4割達成は間近!キャッシュレス決済の最新市場動向
https://media.aupay.wallet.auone.jp/articles/1226日本社会でもキャッシュレス決済の普及が進んでいますが、直近のキャッシュレス決済比率を見ると、政府が掲げる2025年までに4割程度という目標達成が見えてきた状況です。この記事では、各種調査を元に、キャッシュレス決済比率の推移や、お店や消費者の利用動向など、最新のキャッシュレス決済市場動向を紹介していきます。
キャッシュレス決済普及に大きな効果があった「キャッシュレス・消費者還元事業」とは
https://media.aupay.wallet.auone.jp/articles/272019年から実施された「キャッシュレス・消費者還元事業(キャッシュレス・ポイント還元事業)」は、キャッシュレス決済の普及に大きな効果がありました。この記事では、国の方針や「キャッシュレス・消費者還元事業」の概要と成果について、わかりやすく紹介します。また、2020年9月から始まった「マイナポイント事業」や、Go Toキャンペーンなど、キャッシュレス決済のトレンドについても解説していきます。
キャッシュレス決済導入率は業態によっても異なる
同じく経済産業省の調査によると、業態別のキャッシュレス決済導入率は以下の通りです。
小売業、宿泊施設、飲食業で、比較的キャッシュレス決済の導入が進んでいます。
【業態別キャッシュレス決済導入率】
・飲食:82%
・生活関連:72%
・小売:85%
・娯楽80%
・宿泊:84%
また、お店の平均単価によっても利用されるキャッシュレス決済の傾向は異なります。
非日常的かつ高単価商品を扱う百貨店、家電量販店、ホテル、航空券販売などの業態では、クレジットカードの利用率が高くなっています。
一方、QRコード決済はコンビニのような日常利用が多く、1,000円前後の決済で利用されやすい傾向にあります。
価格帯による利用動向の違いは、みなさんのイメージ通りではないでしょうか。
キャッシュレス決済対応店舗は導入の効果を実感している?
先の経済産業省の調査では、キャッシュレス決済を導入した理由や効果の分析も行われています。
導入済みのお店がキャッシュレス決済をどう捉えているかを見ていきましょう。
■売上増・機会損失回避などに効果あり
キャッシュレス決済を導入した理由として多くのお店が、「機会損失の回避」「売上増の見込み」「顧客からの要望」などを挙げています。
また、売上に占めるキャッシュレス比率が高い店舗ほど、導入効果を実感しやすいことも明らかになっています。
具体的にはキャッシュレス比率が3~4割を超えると、キャッシュレス決済導入にメリットを感じる店舗割合が大きく増加しています。
キャッシュレス決済比率は増えれば増えるほど、現金の取り扱いや売上管理の手間の軽減につながりやすくなります。
そのような理由から、キャッシュレス比率と導入効果には一定の相関関係があると考えられます。
■キャッシュレス比率が高いお店ほど効果を実感している
キャッシュレス決済の導入効果を感じるお店がある一方、およそ半数のお店が「特に効果やメリットを感じていない」と回答しています。
そして、そのうちの多くが「キャッシュレス比率2割以下」のお店です。導入後あまり利用されず、結果として効果も実感しづらいということでしょう。
一方、明確な目的を持って導入した店舗では、客単価の増加や現金取り扱いコストの削減など、なんらかのメリットを感じる割合が高くなっています。
以上を踏まえると、キャッシュレス決済の導入では「いかにお客さまに使ってもらうか」という視点が欠かせません。
キャッシュレス決済が使えることをアピールして、お客さまの認知度・利用率を上げる取り組みをしましょう。
それが結果として、売上アップや現金取り扱いの手間削減につながり、事業者としても導入メリットを実感しやすくなります。
消費者側のキャッシュレス決済へのイメージは?
ここでは、消費者側の視点に立ってキャッシュレス決済を見ていきましょう。
お客さまがどのような意向を持ち、どう行動しているのかを理解することは事業者にとってとても大切です。
■日常的に利用している人は半数以上
キャッシュレス比率に関する調査は、さまざまなデータが存在します。
例えば、経済産業省の統計調査では、2022年の日本のキャッシュレス決済比率は36%ととしています。
また、同じく経済産業省の2022年のアンケート調査(キャッシュレス実態調査)では、「7~8割程度以上キャッシュレスを利用する」と回答した人は54%と発表されています。
なお、両者の調査結果にはかい離が見られますが、その理由は「データの算出方法」にあります。
前者のキャッシュレス決済比率は、統計データより算出されています。具体的には、クレジットカード・デビットカード・電子マネー・QRコード決済の支払い額全体を、民間最終消費支出で割って比率を計算しています。
一方、54%という数字はWebアンケートによるもので、消費者の利用実態を網羅的に把握するために行われたものです。
■中小店舗では使えないというイメージが根強い
調査データ上では、中小店舗のキャッシュレス決済導入率は8割に達しています。
しかし消費者側のイメージでは、使える場所との認知が行き渡っていない実態がわかりました。
キャッシュレス決済が使えるイメージを業態別に聞いたところ、スーパー、ドラッグストア、コンビニ、家電量販店、ファーストフードなどは「キャッシュレス決済が利用できる業態」として高い認知度を得ています。
一方、利用できないと認知されている業種では、個人経営の飲食店、理美容室、クリーニング店、病院、小物雑貨店などが挙がっています。
例えば、チェーンの飲食店で「必ず使えるイメージ」と答えた割合は34%でしたが、個人経営の飲食店では4%にとどまります。
つまり、同じ業態でもお店の規模や特徴によって、キャッシュレス決済が使えるイメージは異なります。
キャッシュレス決済のアピールをすれば差別化につながる
キャッシュレス決済も、導入すれば何もせずに効果があがるツールではありません。
「お客さまの利便性を上げたい」「会計業務の負担が軽減したい」「取り扱う現金を減らしたい」など、キャッシュレス決済は経営上の課題を解決するために導入されるべきものです。
言い換えれば、キャッシュレス決済の導入はスタートラインであり、導入後はお客さまへのアピールや認知度向上の取り組みが重要です。
店内POPを掲示する、公式サイトやSNSで情報発信する、Googleマップの店舗情報に記載するなど、できることは沢山あります。
■キャッシュレス決済は当たり前の時代になりつつある
クレジットカードやQRコード決済などを見れば、キャッシュレス決済は既に、スーパーやコンビニといった日常的な買い物から、百貨店や家電量販店での高額支払いまで社会の隅々まで浸透しているといってもいいでしょう。
キャシュレス決済が使えないイメージのある中小企業でも、実際には80%が導入済となっています。
その一方で「まだ利用できないシーンは多い」と感じている消費者は少なくありません。
だからこそ事業者としては、キャッシュレス決済が使えることのアピールが、他店との差別化につながり、売上や顧客満足度のアップにつながる効果が期待できると言えるでしょう。