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QRコード改札とは?使い方や各路線での導入状況を紹介

QRコード改札とは?使い方や各路線での導入状況を紹介

QRコードの乗車券に対応した改札が登場。交通系ICカードの普及で利用率が下がった磁気切符を置き換えることが期待されています。 スマートフォンでの購入・利用も容易になり、複雑な条件の乗車券情報も1枚に含められるなど、新しい乗車体験が可能になり、インバウンド対策としても有効と考えられます。 本記事では、QRコード改札の仕組みや利点、各路線での導入状況についてくわしく解説します。

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QRコード改札とは

QRコード改札は、切符やスマートフォンなどに表示されたQRコードを使って公共交通機関の改札を通過する乗車システムです。従来の磁気券や交通系ICカードに加わる新たな選択肢として、対応する改札機が登場しはじめました。

QRコード改札の仕組みと使い方

イベントや航空券などで、QRコードをチケットとする入場方式に触れたことがある方も多いのではないでしょうか。

QRコード改札でも同様で、QRコードを乗車券として改札機に読み取らせる仕組みです。紙に印刷したQRコードでも、スマートフォンに表示させたQRコードでもよいことが特徴です。

また、QRコードの画像を表示できればよいため、モバイルSuica/モバイルICOCA等のように、スマホ側に特別な対応が不要です。

従来の磁気切符やICカードとの違い

磁気切符では、切符に磁気コーティングがされており、そこに各種情報が書き込まれています。それを改札機で読み取ったり書き換えをしたりして、乗車できる仕組みです。

SuicaやICOCAといった交通系ICカードは、カードに埋め込まれたICチップを、改札機が読み込んで情報の記録・処理を行っています。モバイルSuica/モバイルICOCAも、スマートフォンに埋め込まれたICチップを利用する方式です。

なお、ICカードのような仕組みをNFC(Near Field Communication)といい、日本語では「近距離無線通信技術」と訳されます。

●ICカード(NFC)のメリット・デメリット

メリットデメリット
処理速度が速い(0.1秒程度)通信可能距離が短い(10cm程度)
セキュリティレベルが高い通信速度が遅い(最大847kビット/秒)
複数の規格に対応可能NFCに対応した機器でないと使用できない

参考)【5分でわかる】NFCとは?仕組みや活用シーンをわかりやすく解説

これに対して、QRコード改札では二次元バーコードを使うため、ICカード改札とは情報の読み取り方式が異なります。

交通系ICカード/スマートフォンをタッチする改札方式も広く普及しているなかで、QRコード改札に期待されていることは何でしょうか。

なぜQRコード改札が導入される?

鉄道各社では、磁気式の近距離の切符をQRコードで置き換えていく方針を発表しています。

交通系ICカードが普及し磁気式の利用が減るなか、切符の廃棄にともなう環境負荷を減らすなど、切符が詰まるなどの故障を削減できることが期待されています。

鉄道8社 磁気付き近距離切符 QRコードに順次置き換えへ|NHK 首都圏のニュース

https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20240529/1000105013.html

【NHK】JR東日本など首都圏で運行する鉄道8社は、磁気付きの近距離の切符を将来的にQRコードを利用したものに順次置き換えていく方針を発表しました。…

日本の乗車券方式の変遷

ここでは改めて、乗車券や改札システムの歴史を振り返ってみましょう。

日本の鉄道は1872年(明治5年)の新橋-横浜間開業で幕を開け、長い歴史の中で乗車券システムを進化させてきました。

乗車券として、当初は紙の切符が主流でしたが、その後1967年(昭和42年)に世界初の自動改札機が本格導入されます。これを機に、磁気式の切符が普及しました。

さらに、2000年代に入るとJR東日本のSuicaをはじめ、交通系ICカードが広く使われるようになります。

以降は紙の切符の利用率が下がり、近年はICカードの利用率が9割を超え、切符は1割に満たないといわれています(2024年5月報道時点)。

QRコード改札機導入の狙い

2024年5月のNHK報道によれば、JR東日本など首都圏で運行する鉄道8社は、磁気式切符を将来的にQRコード方式に変更していく方針を発表しています。

その背景には、交通系ICカードの普及がすすみ磁気式切符の利用率が5〜10%と少ないこと(2024年5月報道時点)、その一方磁気式切符はリサイクルしづらく、また改札機の故障の原因となっている事情があります。

磁気式切符をリサイクルするには、事前に磁気面を剥がす必要がありコストが高い一方、QRコードの場合は廃棄事態が発生しないため環境負荷の低減が期待できます。

また、紙の切符は改札機の故障原因であり、また機械的な機構が必要なためコスト増の要因です。非接触なQRコード方式に置き換わると、改札で切符が詰まって駅員さんが直しているシーンも、減っていくことが予想されます。

QRコード改札のメリット

QRコード改札のメリットをまとめると、以下のようなポイントが挙げられます。

・企画乗車券との相性がいい
・スマホでも改札が通れる(ICチップ内蔵の有無に依存しない)
・改札機で紙詰まりが起きる心配がない
・改札費の維持費削減につながる
・磁気式と比べてリサイクルしやすい
・インバウンド観光客への対応が容易

QRコードは格納できる情報量が多く、複雑な条件の乗車券情報も1枚の切符に含められます。

そのため、企画乗車券との相性が非常に良い点は、QRコード改札のメリットといえるでしょう。

すでに京王電鉄と高尾登山電鉄では、QRコードを活用した「高尾山きっぷ」を販売しています。

また、QRコードを使うことで、ICチップを内蔵していないスマホでも改札を通過可能です。スマホの機種に依存せず、オンライン決済であれば券売機を利用する必要もありません。

この特徴は、インバウンド対応としても有効です。外国人観光客は、来日前にオンラインで乗車券を購入し、自身のスマートフォンに表示されたQRコードを使って改札を通過できます。

また、ICカードでは営業エリアをまたぐと利用できないケースもあり、QRコードを利用することでさまざまなパターンの電車利用が可能になるでしょう。

一方、デメリットとしては、「カメラのQRコード読み取りに時間がかかるケースがある」「読取端末の導入費用が新たにかかる」といった点が挙げられます。

QRコード改札導入の現状

QRコード改札は、各鉄道会社から実証実験や本格導入の計画が次々と発表されていて、日本各地で普及していく見込みです。

JRは2024 年度から順次導入

JR東日本は、2024年度下期から東北エリアを皮切りに、QRコードを利用した新たな乗車サービスを順次開始する計画を発表しています(参考)。

具体的には、オンラインの「えきねっと」で予約・購入した乗車券類のQRコードを、自動改札機にかざすことで電車に乗れるようになります。

新幹線や在来線を含むJR東日本エリア全線(BRTによる運行区間を除く)で利用可能となる予定で、Suicaを持っていない利用者でも、駅の券売機や窓口を経由せずに乗車できるようになります。

導入に向けては、2022年12月から一部の駅でQRリーダーを搭載した新型自動改札機の設置が進められています。

東武鉄道は2027年度の導入を目指す

東武鉄道も、2027年度のQRコード改札の導入に向けて動き出しています(参考)。

大手私鉄で初めて、2024年5月に磁気乗車券全廃の方針が発表されました。

東武鉄道は、磁気からQRコードへ変更することで改札機の維持費削減につながるとしています。

さらに、JRや東武鉄道を含む首都圏の鉄道8社は、2026年度末から順次磁気式切符をQRコードが印刷された乗車券に置き換えていく方針を共同で発表しています(参考)。

今後は首都圏全体でQRコード改札の普及が進むことが予想されます。

京王電鉄はQRコードを活用した乗車実験を実施

京王電鉄は、2024年3月25日からQRコードを活用した「高尾山きっぷ」発売の実証実験を開始しました(参考)。

この実験では、クレジットカードなどのタッチ決済やQRコードを使用して、企画乗車券である「高尾山きっぷ」を購入できます。

Webサイト「TAMa-GO E-TICKET」でデジタルチケットが購入でき、高尾山口駅までの往復乗車と高尾山ケーブルカー・リフトの利用が可能です。

大阪では「スルッとQRtto(クルット)」が利用開始

関西圏では、2024年6月から「スルッとQRtto(クルット)」というデジタル乗車券サービスが開始されています(参考)。

このサービスは、スルッとKANSAI協議会が提供するもので、QRコードを活用した新しい乗車システムです。

利用者は専用のウェブサイトでQRコード乗車券を購入します。

スマホに表示されたQRコードを改札機にかざすことで、チケットレスで電車やバスなどの交通機関を利用できる仕組みです。

サービス開始時点では、大阪メトロや、近鉄、京阪など7社で利用可能。

公共交通機関だけでなく主要観光スポットへ入場できるチケットも販売されており、観光客の回遊性・利便性向上が期待されています。

熊本県内では全国交通系ICカードを廃止する動きも

熊本県内の5つの交通事業者は、2024年内に全国交通系ICカードのサービスを停止し、代わりにクレジットカードなどのタッチ決済を導入する方針を発表しました(参考)。

これに関連して、QRコードを利用した乗車券の販売も検討されていて、多様な手段を提供することで利用者の利便性向上を目指しています。

この決定の背景には、台湾の半導体メーカーTSMCの進出による外国人労働者やインバウンドの増加にともなうキャッシュレス決済の多様化や、スマホ決済の利用増加があります。

また、既存の機器をそのまま更新することに比べ、新しいシステムの導入が約半分のコストで可能であることも大きな要因となっています。

ただし、地域独自のICカードである「くまモンのICカード」は継続して利用可能となる予定です。

交通系サービスですすむQRコードの活用

QRコードは、今回ご紹介したQRコード改札だけでなく、交通系サービスの各所で利用されています。

たとえばQRコード決済のau PAYの交通関係では、航空券の「ジェットスター」や新千歳空港内の各施設・店舗、タクシーアプリの「S.RIDE」や高速バス・夜行バスの「WILLER TRAVEL」でも、au PAYでお支払いが可能です(2024年8月現在)。

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