そもそも「商圏分析」とは ?

「商圏分析」について解説するうえで、まずは重要となる「商圏」について説明します。商圏とは、端的に言えば「店舗の利用者がいる範囲」のこと。具体的には、集客を見込める顧客がいる地理的な範囲を指します。
商圏は店舗を中心に半径で示されることが多く、業種や店舗の規模、競合店の状況などによって大きさは異なります。
■商圏分析とは
「商圏分析」は、この商圏の特性を調査し、店舗経営のためのマーケティング施策に活かす手法のこと。商圏内の人口や世帯数・年収・競合店の有無など、 さまざまなデータを収集・分析することで、自店舗の強みや弱み、改善すべき点が見えてくるので、店舗をさらに成長させるために重要です。
商圏分析は大規模チェーン店だけでなく、個人経営店舗も継続して取り組むべき有効な手段といえます。
■商圏分析にはさまざまなデータが必要
商圏分析を行う際、以下のようなデータが必要となります。それぞれ、商圏内でどのような人たちが、どのような交通手段で、どのように買い物や生活をしているのかを可視化するために非常に大切な情報です。
・商圏内の人口や世帯、市場規模
・周辺の地理的な特性(高速道路や大きな河川、商業施設など)
・商圏内に住む人々のライフスタイルや購買行動
・競合店舗の情報
■商圏分析は出店後にこそ重要
「商圏分析は新規出店時にやることで、その後は取り入れる意味がない」と考える方もいるかもしれませんが、オープン後でも十分に役立てることができます。
その理由は、近隣に競合が出店したり、再開発により人口が急増したりと、商圏の状況は刻々と変化しているからです。新規出店時だけでなく、出店後も定期的に商圏分析を行うことで、常に最新の状況を把握でき、今後を見据えた適切な経営戦略を立てやすくなります。
商圏分析のメリット

ここからは、既存店舗で商圏分析を行うメリットをご紹介します。
■集客・販促施策の精度アップ
店舗が注力すべきターゲットや地域などの情報を可視化することで、集客・販促を行う際の根拠として活用できるようになります。
売上アップや新規顧客の獲得、リピーター育成など、店舗経営のために欠かせない施策を高い精度で企画・実施できるようになります。例えば、どの地域にどのようなチラシを配るべきか、どのような人に向けたキャンペーンをどのタイミングで実施すべきか、などです。
■費用対効果アップ
商圏分析を行うことで、エリア内のどこにどれくらい潜在顧客がいるかを把握することができるため、ターゲットがいるエリアへ集中的に広告費を投入できます。
無駄な広告費を減らせたり、 見込み客を予想して在庫ロスのリスクを回避できたり、コスト削減にもつながるでしょう。
■各施策の結果の良し悪しを見極める判断材料に
商圏分析によって客観的なデータを得ることで、店舗で実施したチラシやキャンペーンといった施策の効果があったかなかったか、結果の良し悪しを図る判断材料として活用することができます。
商圏分析の基本的なやり方

商圏分析は、計画から実施までのステップを正しく踏むことが大切です。個人経営の店舗向けに、商圏分析の基本的なやり方について順を追って解説します。
■ステップ1:自店舗の商圏を把握
まずはご自身の店舗の商圏を把握しましょう。
具体的には、自店舗がどこにあるかを地図上に記し、そこへ現在の顧客情報(住所・年齢層・家族構成など)をマッピングしていき、店舗の商圏範囲を決めていきます。例えば「売上の7割が半径10km以内に住む顧客で構成されているため、商圏を半径10kmと設定する」といった具合です。
このとき、顧客管理システムやPOS(販売時点情報管理)データなどを活用すると、効率的にマッピングできます。 なお、紙の地図を使うと場所を取るうえに修正の手間もかかるため、ウェブのマップツールを活用するのがおすすめです。
■ステップ2:競合店舗をマッピング
続いて、同じ地図上に競合店舗をマッピングしていきます。商圏内に競合となりえる店舗がどれくらい存在するか、それぞれの規模やシェア率、距離感を可視化します。
このとき、周辺にある高速道路や線路、河川、大きな商業施設など、商圏をさまたげてしまう障害物がないかどうかも確認しておくと良いでしょう。
■ステップ3:公的な統計データと照合
いよいよ、ステップ2までに得られた情報を、公的な統計データと照らし合わせて分析します。商圏分析に活用できる主な統計データは、以下のサイトから取得できるのでチェックしてみましょう。
各ステップで得たデータや情報をもとに地図や統計情報にまとめ上げ、やりたい施策や知りたい情報に合わせてレポートを作ることで、商圏内の状況を可視化することができます。
■飲食店を例にした商圏分析シミュレーション
上記のステップをどう進めればよいのか、架空の飲食店「A」を例に挙げて、商圏分析の流れをシミュレーションしてみましょう。
ステップ1:自店舗の商圏を把握
「A」は、駅から徒歩5分の場所にある、客席数30席のイタリアンレストランという設定です。
主なターゲット層は、近隣住民のファミリー層と会社員。顧客情報をマッピングした結果、来店している人のうち8割が半径1km以内に住んでいることが分かったため、商圏は半径1kmと設定しました。
ステップ2:競合店舗をマッピング
競合店舗の状況を調査すると、半径1km以内にイタリアンレストランが2軒、その他にカフェや居酒屋などが数軒あることが判明。競合店の情報を調べた結果、1軒は高級志向、もう1軒は若者向けのバルであることが分かりました。
また、南側には大きな河川があり、河川を隔てた南側の集客は難しそうです。
ステップ3:公的な統計データと照合
「国勢調査」のデータから、半径1km以内の人口は約5,000人、ファミリー層が3割、会社員が5割であることが分かりました。
また、「経済構造実態調査」のデータから、この地域の平均所得は近隣の地域よりもやや高いことが分かりました。
分析結果
これらの情報を総合的に分析した結果、A店はファミリー層と会社員をターゲットに、中~高価格帯のイタリアンレストランとして営業していくのが適切であるという結論が導き出されました。
競合店との差別化として考えられるのは、手作りの料理や地元の食材をアピールすること、ファミリー層向けのサービスを充実させること。それらを周知し集客につなげるために、特にファミリー層が多い地域に絞ってチラシの配布を行うと良さそうです。
初心者におすすめの商圏分析で使える無料ツール

個人経営店舗で定期的な商圏分析に取り組むには、無料で使えるツールを上手に活用してコストを抑えるのがポイント。おすすめの無料ツールを3つピックアップして紹介します。
■e-Stat
日本の統計が分かる政府統計ポータルサイト。人口統計や経済統計など、さまざまなデータが網羅されています。

政府統計の総合窓口(e-Stat)は各府省等が公表する統計データを一つにまとめ、統計データを検索したり、地図上に表示できるなど、統計を利用する上で、たくさんの便利な機能を備えた政府統計のポータルサイトです。
■地図で見る統計(jSTAT MAP)
e-Statにある誰でも使える地理情報システム。地図上に統計データを表示でき、視覚的に把握しやすいのが特徴です。
■Googleマップ
商圏分析に特化したツールではありませんが、「マイマップ」機能を駆使すれば、地図上にさまざまな情報を集約できます。

Google マップで世界の旅へ。ストリートビュー、3D 表示、詳細なルート検索やナビ、構内の徒歩経路検索など、便利で楽しい機能が盛りだくさん。パソコンでも携帯端末でもご利用いただけます。
キャッシュレス決済の導入で、顧客データの収集・分析を効率化

とはいえ、店舗の営業が忙しい中で膨大なデータを集めて分析し、さらに作業を定期的に行うのはなかなか大変です。そこでおすすめしたいのが、キャッシュレス決済「au PAY」の導入。
同サービスの機能のひとつである「au PAY グロースパック クーポン(有料)」を活用すれば、店舗と顧客層に合ったクーポンを手軽に配信できるのはもちろん、データ収集・分析も自動で行うことができます。
■au PAY グロースパック クーポン
「au PAY グロースパック クーポン」は、au PAY加盟店が自由にクーポンを作成し、好きな時間に配信できるサービス。au PAYユーザー向けに配信したクーポンごとの閲覧数・利用者数・年代・性別など利用情報を一括で確認できるため、商圏分析のデータ収集として効率よく活用でき、新たな集客の参考にすることもできます。
1加盟店あたり月額550円(税込)と手頃な価格で利用できるので、コストを抑えながら経営改善を進めたい方におすすめです 。
商圏分析に基づいた戦略で、集客はもっと伸ばせる
今回解説した「商圏分析」は、店舗を経営するうえでぜひ覚えておきたい手法です。店舗経営を継続して成功させるためには、定期的な商圏分析を行っていきましょう。本記事で紹介したステップやツールを参考に、商圏分析に取り組んでみてはいかがでしょうか。