行動経済学は従来の経済学とどう異なるか
従来の経済学では、物事を一般化・抽象化するために、人は自己の利益を最大化する「合理的経済人」という前提を置きます。しかし、現実の人間は常に合理的な意思決定を行うわけではありません。例えば、スイーツを買うために数時間行列に並び続けるのは、必ずしも合理的ではない場合があるはずです。
こうした一見不合理判断がなぜ起きるのかを心理学を交えて解き明かそうとする学問が「行動経済学」です。2002年に行動経済学者ダニエル・カーネマンがノーベル賞を受賞したことで、一般にも広く認知されるようになりました。
行動経済学には、損失を回避する選択をしがちな「プロスペクト理論」、費やしてしまった費用を取り戻そうとする「サンクコスト理論」など、単独でもよく知られた理論が含まれています。先ほどの例で言えば、「ここまで並んだのだからもったいない」という心理が働く「サンクコスト理論」で説明できます。
ビジネスの現場においては、行動経済学を活用することで、マーケティング施策の成功率があがったり、発想のパターンを増やせることが期待されています。
損失を回避する行動をとりがちなことを示す「プロスペクト理論」
「先着何名様」「今月末まで何%OFF」などのキャンペーンをユーザーが利用する場合、“おトクだから”だけではないことがあるのをご存知でしょうか。
「先着何名様」が売り切れてしまった場合、実際には損をしていないのに「もっと早く買っておけばよかった」という後悔が発生しがちです。そうならないよう、先に買ってしまおうという心理は、人は損失を回避する行動をとりがちなことを示す「プロスペクト理論」によるものです。
QRコード決済各社のキャンペーン合戦においても「プロスペクト理論」が影響しています。他社のQRコード決済がおトクなキャンペーンを実施している場合、そのサービスを利用していないユーザーは「(実際には損をしていないのに)損をした」心理になりがちです。
そのため、各社で横並びのキャンペーンが実施される事になりますが、経営母体が大きくない運営社は、体力的に厳しくなりつつあります。その点、通信大手のKDDIが運営するau PAYなら、ご安心いただけます。
費やしたコストを取り戻そうとする「サンクコスト効果」
QRコード決済では、各社がポイント還元を行っていますが、ポイントを使うことでこれまでに費やしたコストを取り戻そうとする心理を、行動経済学では「サンクコスト効果」として説明しています。
例えば、人気店まで来て大行列がある場合、出直した方が合理的でも「ここまで来たんだから」という心理で並び続けてしまいがちです。
au PAYでも、より使ってもらえるよう行っている工夫が「サンクスコスト」で説明できます。au PAYではPontaポイントを利用できますが、Pontaポイントはau PAY以前からある共通ポイントで、すでにポイントを持っている方も多いはずです。
ユーザーには「サンクコスト効果」によってPontaポイントを使おう、使える場所を探そうという心理が発生しているので、加盟店にとっては集客や売上UPのチャンスとなるわけです。
au PAYでたまる「Pontaポイント」!ため方やつかい方を解説
https://media.aupay.wallet.auone.jp/articles/33近年普及しつつあるQRコード決済。多くの「◯◯PAY」がそれぞれキャンペーンを実施していて、消費者はよりメリットの大きいQRコード決済サービスに集まります。今回は、通信大手のKDDIが運営するQRコード決済サービス「au PAY」でたまるPontaポイントの仕組みと、店舗側がau PAYを導入するメリットを紹介します。
現状を変えることに抵抗感を持つ「現状維持バイアス」
「現状維持バイアス」も、行動経済学から離れて単独で認知されているくらい、有名な理論です。人は一旦慣れた環境を変えるのに抵抗を感じる心理を指しています。スマホのアプリで言えば、インストールしただけで使っていないアプリは、乗り換えコストが低いのであっさり乗り換えられてしまったり、便利さを感じる前に離脱してしまったりします。
QRコード決済で言うと、決済する前に初回のチャージが必要な他社と比べ、最初からPontaポイントがたまっているユーザーが多いau PAYの方が、まず一回使ってもらえるハードルが低いことがわかります。
サービスに自信があるなら「初回無料」「一定期間無料」などでまず利用してもらい、便利さを感じてもらうのも、よく行われているマーケティングです。
「続きはWebで」も行動経済学だった?
TV CMで「続きはWebで」として全てを示さない演出は、行動経済学では「ツァイガルニック効果」と言います。人は不完全な情報を示されると確認しようと注意が向く心理を利用したテクニックです。
このほかにも、TV CMやWebマーケティングでよく使われている手法のなかには、行動経済学の理論で説明できるものがいくつかあります。恋愛や営業テクニックとして披露されることもある、相手とよく会うと評価が高くなる心理効果は「ザイオンス効果」と言います。
ある商品のWebサイトを見た後、別のサイトを見ても同じ商品の広告が表示されるリマーケティング広告も「ザイオンス効果」を狙っています。
TV CMやWeb広告のバナーでは、限られた時間やスペースで自社製品・サービスを印象づける必要があります。こうした際役立つのが権威がある人物・組織・賞などでアピールする「アイヒマン効果」です。
まとめ
行動経済学がQRコード決済を含めたビジネスやマーケティングの現場で応用されてきた事例を見てきました。行動経済学の理論には色々ありますが、同じ商品・サービスを提供していても、見せ方によって人の心理的な評価が変わる点がポイントです。行動経済学をうまく活用すれば、同じ予算でもより大きな効果を得られることが、期待できます。