小売やスーパーはなぜセールやクーポン配信をするのか
小売やスーパーは、なぜ利益を削ってまでセールをするのでしょうか。
その理由のひとつは、「顧客を引き付けて購買意欲を刺激する」ことです。魅力的な価格で商品を提供すれば、お客さまの来店動機をつくりだせます。
例えば、「キャベツ1玉50円」というセールを行うスーパーがあるとしましょう。
競合店舗と比べて破格といえる目玉商品を設定することで、来店数が増加します。
目玉商品だけ購入するお客さまは少ないので、ほかの商品も売れて売上全体の底上げにつながります。目玉商品以外は、通常価格のまま売上がアップする点がポイントです。
なお、クーポン販促もこの原理と同じです。飲食店が「ビール100円引き」のクーポンを発行すれば、それを目当てにお客さんがお店に足を運びます。
食事も頼む方が多ければ、結果として100円という値引きに対してそれ以上の価値が生まれます。
セールとクーポンの種類と戦略
セールとクーポンは顧客を引き付け、購買意欲を高めるための重要なツールです。
これらの販促手段はさまざまな形式で展開され、それぞれ異なる目的があります。
■セールの種類
セールの代表的な種類には、以下のものがあります。
■タイムセール
限定時間内でのセールは、短期間での集客を狙います。時間を区切ることで顧客の購買意欲を促進できます。スーパーでは夕方に行われることが一般的です。
■バンドルセール(バイワンゲットワンフリー)
ひとつの商品を購入すると、もうひとつが無料になるセールです。客単価アップ、購入点数アップにつながる販促手法として知られ、スーパーやアパレルなどでよく用いられます。
■季節セール
季節の変わり目や記念日、イベントにあわせたセールで、歳末セールや決算セール、サマーセールなど定番化したセールもあります。こうしたセールは需要喚起や季節商材の入れ替えに役立っています。
■〇円均一セール
複数の商品を同じ価格で販売するセールで、価格がわかりやすいのが特徴です。粗利益率の高い商品と低い商品をうまく組み合わせることで、一定の粗利益を確保します。
■クーポンの種類
クーポンは、特定の商品やサービスに対して割引や特典を提供する販促手法です。クーポンの主な種類には、以下のものがあります。
■割引クーポン・値引きクーポン
特定の商品やサービスの価格を割引・値引きをおこなうクーポンです。お客さまにとってのメリットがわかりやすく、もっともよく利用されるクーポンの形態といえるでしょう。
■特典クーポン
商品購入時に追加の特典を提供するクーポンです。お客さまに対して、「デザート1品無料」「スタンプ3倍」など割引・値引きではない特典を用意します。客単価を下げる必要がないのがメリットです。
■時間限定クーポン
特定の時間帯に使えるクーポンです。平日や客数の少ない時間帯にのみ使えるようにすれば、売上の平準化につながります。
例えば、東急グループは早朝の乗車客に対して、東急グループ内のさまざまなサービスや施設で利用できるクーポンをアプリで配信しています。オフピーク通勤を促し、混雑緩和につなげています。
セールとクーポンの3つの効果
セールやクーポンは売上拡大のほかにも、いろいろな効果を期待できます。もう少し詳しくこれらの販促の効果をみていきましょう。
■即時的な満足感の提供
セールやクーポンは消費者の購買意欲を刺激し、その場での購入決定を促します。
お店側にとっては即効性のある効果を得られ、消費者側にとっても「おトクに買えた」「節約できた」という満足感に直結します。
スタンプカードやポイント付与も広く利用されている販促手法ですが、消費者がそのメリットを実際に享受できるのは「次回以降」です。
その点、セール・クーポンは「その場」でメリットが得られるため、顧客満足度につながりやすいと考えられます。
■在庫管理
在庫コントロールは、店舗運営において重要な要素のひとつです。
特に生鮮食料品のように販売期間が決まっている商材は、過不足のない在庫管理が欠かせません。スーパーで夕方に、お惣菜に半額シールが貼られるのもその一環です。
ちなみに、お出かけスポットとして人気のアウトレットモールも、企業の在庫管理戦略に関係しています。
高級ブランドでは、ブランド力低下を防ぐため、セールを避けています。また、頻繁にセールをおこなうと買い控えを招くリスクもあります。
その代わり高級ブランドでは、「アウトレット品」「B品」としてアウトレット店舗で販売する手法で、在庫の問題に対処しているのです。
■他店舗との差別化
独自のセールやクーポンを提供すれば、他の店舗との差別化につながります。
セールやクーポンを通じた差別化戦略は、中小規模のお店で特に効果的です。
例えば、広域に店舗を展開する大手スーパーは多くの場合、全店共通の販促を実施します。
ただ、当然お店ごとに地域差や売れる商品も異なります。
一方、個店であればそのお店に合った販促を実行できます。
例えば、地域の祭りや地元小学校の運動会に合わせたセール・クーポンなどがこれに該当します。
セールやクーポンは比較的気軽に実施できる販促であるため、小規模店舗の差別化戦略として一定の効果が期待できます。
セールとクーポンの心理学
消費者の購買行動には、心理学的な要因が大きく影響しています。セールやクーポンは、購買行動のきっかけになるだけでなく、提供した割引・値引き以上におトクに感じてもらえる心理学的なメリットがあります。
心理学的な効果には名前がついているものもあり、これらを理解することで、より効果的な販促戦略を立てられるでしょう。
■損失を回避したくなる心理
人は利益を得るよりも、損失を避けるために大きな努力をする特性があります。
「損失回避バイアス」「プロスペクト理論」などと呼ばれ、マーケティングや販促にも応用されています。
例えば、「今日買えば500円トクしますよ」と「今日買わないと500円損しますよ」という2つのコピーであれば、後者のほうが効果が高くなります。
■アンカリング効果
アンカリング効果とは、最初に提示された価格や情報が、その後の消費者の判断や評価に大きな影響を与える心理的な現象です。
セールやクーポンの場合、最初に示された定価が「アンカー(基準点)」となり、消費者はその価格を基準にして商品の価値を評価します。
例えば、定価1,000円の商品の場合、セールで50%割引されていれば定価に対してその価格が「おトク」であると感じます。
もし競合店舗では普通に500円で売っていたとしても、アンカリング効果が作用して売れ行きがよくなる可能性があります。
ただし、景品表示法では二重価格表示は禁止されています。売価設定はルールに則って設定しなくてはいけません。
■フレーミング効果
フレーミング効果とは、同じ情報や選択肢でも、その提示の仕方によって消費者の判断や選択が変わる心理的な現象です。
松竹梅の法則とも呼ばれ、この心理法則を上手に利用しているのが「オリジン弁当」です。
もともと1種類だった幕の内弁当を、松・竹・梅の3種類に増やしたところ、単価が上がり売上も増えたという例があります。
この場合、最上位の「松」を設定すると、中位の「竹」がリーズナブルで魅力的な選択肢として映り、消費者は「竹」を選びやすくなる傾向があります。
au PAY グロースパック クーポンをご利用の事業者向け!売上・利益をアップさせるクーポン設定方法
ここでは、au PAYの加盟店向けサービス「au PAY グロースパック クーポン」をご利用の事業者様に向けて、クーポンの割引額・割引率の設定方法をお伝えしていきます。
上手な利用条件の設計によって、消費者にはおトクを提供しつつ、お店側もメリットを得られます。
■現在の販売価格に10%割引のクーポンを適用する場合
単純化して、ある商品の販売価格が1,000円で、原価が600円だとします。
この場合、1個売るごとに400円の粗利が得られます(粗利益率40%)。
ここで、10%割引のクーポンを適用した場合の影響を試算してみましょう。
割引後の販売価格: 1,000円 × (1-0.1) = 900円
割引後の粗利益: 900円 - 600円 = 300円(粗利益率33.3%)
この場合、割引によって粗利益率は減少しますが、クーポンの魅力によって販売数量の増加が期待できます。
では、利益を維持するためにはどれくらいの販売量が必要なのでしょうか。
通常時の販売量を100個として計算してみましょう。
■割引前
売上: 1,000円 × 100個 = 100,000円
粗利益: 400円 × 100個 = 40,000円
■クーポンを適用した場合
売上: 900円 × 134個 = 120,600円(通常時から約20%増加)
粗利益: 300円 × 134個 = 40,200円(通常時とほぼ同じ)
この事例の試算では、10%割引のクーポンを配信した場合、販売数量が134個になればもとの利益を確保できる計算になります。
ただし、あくまでこの計算は「すべての売上がクーポン適用になっている」「単品のみの計算」です。
実際には、すべてのお客さんがクーポンを利用するわけでなく、追加買いもあるはずです。そのため、実際にはもう少し販売数量が少なくても、利益を確保できる構造になります。
■客単価をアップして10%割引のクーポンを適用する場合
クーポンを利用して客単価アップにつなげることも可能です。
平均客単価1,000円・原価率30%のラーメン屋の例を考えてみましょう。
このお店で1,200円以上の会計で使える10%割引クーポンを配ったとします。
■割引前
売上:1,000円
粗利:1,000円-(1-0.3)=700円
■クーポン適用した場合
1,200円の10%引き
売上:1,200円×(1-0.1)=1080円
粗利:1,080円-(1,200円×0.3)=720円
1,500円の10%引き
売上:1,500円×(1-0.1)=1,350円
粗利:1,350円-(1,500円×0.3)=900円
例えば、1,000円のラーメンにトッピングをつけたり、餃子やビールを頼んでもらうことで、お客さまは普段よりおトクに利用できた上で、お店も粗利を増やせる試算になります。
このようにクーポンは、割引率や利用条件を適切に設定すれば、売上や利益を効果的に増やせます。
まとめ
セールとクーポンは、小売業における強力な販促ツールです。
適切に設計されたセールやクーポンキャンペーンは、顧客の購買意欲を刺激し、売上と利益の向上に寄与します。
最近ではデジタルクーポンも利用されるようになり、クーポン販促の効果検証もしやすくなっています。
仮説をもってクーポンを配布 もしくは 発行し、「実際にどのくらいの効果があったか」「売上や利益につながったか」を検証することで、より効果的な販促活動になり、経営活動の好循環を生み出すことに役立てられます。
なお、au PAYではワンコインで始められるクーポンツール「au PAY グロースパック クーポン」を提供しています。
くわしいサービス概要は以下の記事で解説しているので、ぜひご覧ください。
「au PAY グロースパック」とは?au PAYの加盟店向け新サービスを徹底解説
https://media.aupay.wallet.auone.jp/articles/7132022年10月から、au PAYに新たな加盟店向け集客支援サービスが加わりました。その名も「au PAY グロースパック」。加盟店が自由にクーポンの値引き額や利用可能時間を設定し、即座に発行できる新サービスです。