2023年に事業者が利用できるキャッシュレス決済導入補助金のまとめ
2023年6月の時点で事業者が利用できる補助金は以下の通り。
・キャッシュレス決済導入補助金
・IT導入補助金2023
・小規模事業者持続化補助金
・ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
・業務改善助成金
いずれも利用するためには、申し込み要件や審査が設けられており、いつでも・誰でも使えるというわけではありません。
自分のお店・地域は条件に該当しているのか、事前にしっかりとチェックしておきましょう。
キャッシュレス決済導入補助金(対象:各自治体内の事業者)
「キャッシュレス決済端末導入事業費補助金」などの名称で、各自治体から出ている補助金です。
一定の要件を満たすことで、キャッシュレス決済端末の購入費用や設置費用など導入に必要な経費を補助してくれます。
すべての市区町村で実施されているわけではないので、自宅や事業所がある自治体で同様の制度がないかを確認してみましょう。
2023年6月現在でキャッシュレス決済端末導入事業費補助金を実施しているところには以下のような自治体があります。
・兵庫県養父市(〆切:2024年1月15日、上限金額:10万円)
・愛知県蒲郡市(〆切:2024年2月29日、上限金額:15万円)
・長野県山ノ内町(〆切:2024年2月29日、上限金額:5万円)
・茨城県日立市(〆切:2024年3月31日、上限金額:5万円)
・東京都北区(〆切:2024年2月29日、上限金額:10万円)
たとえば、愛知県蒲郡市では次のような支援を行っています。
【市内事業者の皆様へ】令和5年度蒲郡市キャッシュレス決済端末導入事業費補助金のご案内 - 愛知県蒲郡市公式ホームページ
対象者 | 蒲郡市内に店舗を有し、店舗において消費者と対面で金銭の授受を行っている中小企業者 |
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対象経費 | ・決済端末本体 ・汎用端末(パソコン、タブレット等) ・暗証番号入力用キーパット ・電子マネー決済用の非接触リーダライタ ・バーコードリーダ ・その他キャッシュレス決済関連機器 |
対象金額 | 対象経費の2/3以内(千円未満切捨) (上限額:1補助対象店舗あたり5万円、1補助事業者あたり15万円) |
対象期間 | 2023年4月1日(土曜日)~2024年1月31日(水曜日)まで ※上記期間内に新たなキャッシュレス決済の加盟店契約・機器の導入・対象経費の支払いまでを完了している必要がある ※クレジットカード等により対象経費の支払いを行う場合、引き落とし日が支払日となる (注文確定だけでは補助要件を満たさない) |
IT導入補助金2023(対象:全国の事業者)
「IT導入補助金2023」は中小企業・小規模事業者を対象とした補助金で、ITツールを導入する際の費用を支援してくれます。
IT導入補助金には以下の3つの枠が用意されています。
①通常枠(A・B類型)
②セキュリティ対策推進枠
③デジタル化基盤導入枠
キャッシュレス決済導入関連では、「③デジタル化基盤導入枠」が利用されるのが一般的です。
公式サイトでは、取り組みの例として、「キャッシュレス化によるサービス向上を行う事業」が挙げられています。
取り組みイメージ| デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)について| IT導入補助金2023
なお、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)の申し込み概要は以下の通りです。
対象者 | 中小企業、個人事業主 |
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対象経費 | ハードウェア・ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)など |
対象金額 | ~350万円 ※内容によって異なる |
補助率 | 2/3~3/4 ※内容によって異なる |
〆切 | 2023年7月31日まで ※デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)6次締切分 |
令和元年度補正予算・令和3年度補正予算「IT導入補助金2023(サービス等生産性向上IT導入支援事業)」のポータルサイトです。本事業は、ITツールを導入しようとする事業者に対して、ITツール導入費用の一部を補助する制度です。
小規模事業者持続化補助金(対象:全国の事業者)
「小規模事業者持続化補助金(一般型)」は小規模事業者に対して持続的な経営が行えるよう、販路開拓や業務効率化(生産性向上)の取り組みを支援するための制度です。
小規模事業者持続化補助金は主に5つの枠組みが用意されています。
①通常枠
②卒業枠
③賃金引上げ枠
④創業枠
⑤後継者支援枠
対象経費には「機械装置費等」が含まれているため、キャッシュレス決済端末も補助対象となる可能性があります。
そのほかにも、補助対象経費には広告費から旅費、資料購入費などかなり幅広い科目が含まれているため、申請の仕方次第ではいろいろな活用方法が考えられるでしょう。
申請先は地域の商工会・商工会議所となるため、気になる方はまずは相談してみるといろいろなアドバイスがもらえるかもしれません。
対象者 | 中小企業、個人事業主 |
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対象経費 | 機械装置費等、広報費、旅費、開発費など |
対象金額 | 50万円~200万円 ※内容によって異なる |
補助率 | 2/3 |
〆切 | 2023年9月7日まで ※第13回受付分 |
小規模事業者持続化補助金は、持続的な経営に向けた経営計画に基づく、小規模事業者等の地道な販路開拓等の取り組みや、業務効率化の取り組みを支援するため、それに要する経費の一部を補助いたします。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)」は開発・生産のための設備投資等を支援してくれる制度。
「通常枠」「回復型賃上げ・雇用拡大枠」「デジタル枠」など、いくつかの申請枠が設けられています。
デジタル枠の概要には、「DXに資する革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・
サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援」と記載されています。
単純にキャッシュレス決済を導入するだけでは難しいかもしれませんが、事業全体をIT化する一環としてキャッシュレス決済導入費用の補助を受けるということであれば可能性があります。
対象者 | 中小企業、個人事業主 |
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対象経費 | 機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費など |
対象金額 | 100万円~4,000万円 ※内容によって異なる |
補助率 | 1/2~2/3 ※内容によって異なる |
〆切 | 2023年7月28日まで ※15次受付分 |
業務改善助成金
「業務改善助成金」は中小企業や小規模事業者の生産性向上を支援し、最低賃金の引き上げを図るための制度です。
設備投資や人材育成を行い、最低賃金を一定額以上引き上げた場合にかかった費用の一部を助成してくれます。
最低賃金の引き上げを目的とした制度ですが、助成金の対象となる設備例には「POSレジシステム導入による業務効率改善」も含まれます。
そのため、使い方次第ではお店・事業のキャッシュレス化を進める際に活用できるでしょう。
対象者 | 中小企業、個人事業主 |
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対象経費 | 生産性向上・労働能率の増進に資する設備投資費など |
対象金額 | 30万円~600万円 ※内容によって異なる |
補助率 | 9/10、4/5、3/4 ※内容によって異なる |
〆切 | 2024年1月31日まで ※令和5年度申請分 |
最低賃金引上げの支援策である業務改善助成金について紹介しています。
キャッシュレス決済端末導入時にかかる主な費用
ここではキャッシュレス決済導入にかかる主な費用を改めて確認しておきましょう。
キャッシュレス化にともなう費用は、主に次に紹介する3つの項目が発生します。
■決済端末の導入費用
クレジットカードや電子マネーを利用できるようにするためには、「決済端末」が必要です。
販売会社によって異なりますが、端末本体の購入費用とサービス登録料を合わせて数万円かかるのが一般的です。
さらに、多機能なPOSレジを導入する場合には、数十万円かかることも珍しくありません。
■インターネットの通信費用
キャッシュレス決済は、インターネットを経由して決済データをやりとりします。
そのため、キャッシュレス決済の導入を進める際には、事業所のインターネット環境を整備しなくてはなりません。
すでにインターネット契約をしている場合には追加費用はかかりませんが、これから新たに契約する場合には月々3,000円~5,000円程度の費用がかかります。
■決済手数料
3つ目の費用は決済手数料です。キャッシュレス決済は原則、所定の決済手数料が発生します。
決済会社によって料率はまちまちですが、相場は売上の2~4%程度です。
例えば決済手数料3%のクレジットカードで1万円の決済が行われた場合、決済手数料は300円となります。
一般的には決済会社から後日、売上から手数料を引いた額が指定の口座に振り込まれます。
キャッシュレス決済導入の補助金を利用する際の注意点
キャッシュレス決済の導入にはどうしても費用がかかるため、できれば補助金や助成金を利用して上手にキャッシュレス化を進めたいものです。
しかしながら補助金の申請には、事業計画書や経費の見積もりなどさまざまな提出資料が求められます。
適当な内容で申請することはできず、しっかりと導入計画を立てなくてはなりません。
例えば、小規模事業者持続化補助金の申請ガイドブックには、審査のポイントとして以下のような内容が記載されています。
【審査のポイント】
○自社の経営状況を適切に把握し、自社の製品・サービスや自社の強みも適切に把握しているか。
○経営方針・目標と今後のプランは、自社の強みを踏まえているか。
○経営方針・目標と今後のプランは、対象とする市場(商圏)の特性を踏まえているか。
○補助事業計画は具体的で、当該小規模事業者にとって実現可能性が高いものとなっているか。
○補助事業計画は、経営計画の今後の方針・目標を達成するために必要かつ有効なものか。
○補助事業計画に小規模事業者ならではの創意工夫の特徴があるか。
○補助事業計画には、ITを有効に活用する取り組みが見られるか。
○補助事業計画に合致した事業実施に必要なものとなっているか。
○事業費の計上・積算が正確・明確で、真に必要な金額が計上されているか。
「要件が複雑でわからない」「ハードルが高そう」と困ってしまう方も多いかもしれません。
ただ、公的なお金が使われることを考えれば、それも当然です。
申請する事業者は、本気で計画を立てて、補助金を管轄している機関にアピールをしなくてはいけません。
補助金の申請ではその本気度が試されているので、ぜひ前向きにトライしてみましょう。
また、各補助金制度には締め切りが設けられています。
申請準備には時間がかかるため、補助金を利用する場合にはスケジュールに余裕をもっておくことも大切です。
まとめ
今回ご紹介したキャッシュレス関連の補助金は、中小企業や個人事業主にとって上手に活用できれば大変心強い制度です。
「これからキャッシュレス化を本気で進めたい」という場合は、利用しない手はありません。
また、相談窓口が設けられている制度も多いので、積極的に悩みや疑問を直接問い合わせることも大切です。
ご自身の事業にあった制度を賢く活用して、キャッシュレス決済の導入を進めてみてはいかがでしょうか。