粗利益・粗利益率についておさらい
粗利益を改善するには、まず「粗利益とは何か」を正しく理解しておくことが大切です。粗利益の意味や算出方法、粗利益率との違いなど、店舗経営で押さえておきたい基本をおさらいします。
■粗利益とは?
粗利益(粗利)は「売上総利益」とも呼ばれ、商品やサービスを売ることで、どれだけ利益が出たかを示す基本的な指標です。
混同されやすい指標に「営業利益」がありますが、営業利益は粗利益から人件費や家賃、水道光熱費、広告費など、お店を運営するためにかかる費用を差し引いた後に残る利益です。
つまり、粗利益は「商品やサービスそのものから生まれた利益」、営業利益は「お店を動かす費用まで差し引いた後に残る利益」と考えると分かりやすいでしょう。
■粗利益の算出方法
粗利益は、以下の計算式で算出できます。
粗利益=売上高−売上原価
売上高とは、商品やサービスを販売して得た金額のこと。売上原価とは、その売上を得るために直接かかった費用を指します。例えば、小売店であれば販売した商品の仕入れ代、飲食店であれば料理に使った食材費などが当てはまります。
売上原価は「仕入れた金額そのもの」ではない
ここで注意したいのは、売上原価は「仕入れた金額そのもの」ではないという点です。「月初に残っていた在庫」と「その期間に仕入れた商品」を足し、そこから「月末に残っている在庫」を差し引くことで、実際に売れた分の原価を計算します。
例えば、商品を10万円分仕入れたとしても、その月にすべて売れたとは限りません。売れずに残った商品は在庫となるため、その月の売上原価には含めず、棚卸しによって確認します。
売上原価は、一般的に以下の式で算出します。
売上原価=(期首棚卸高+当期仕入高)−期末棚卸高
※期首棚卸高=月初に残っていた在庫の金額
※当座仕入高=その期間に仕入れた商品や原材料の金額
※期末棚卸高=月末に残っている在庫の金額
売上原価と仕入原価・製造原価の違い
売上原価と混同しやすい言葉に、「仕入原価」や「製造原価」があります。
仕入原価は、主に小売業などで使われる言葉で、商品の仕入れにかかる費用を指します。
製造原価は、商品を作るためにかかった費用のことです。材料費だけでなく、製造に関わる労務費なども含まれます。
売上原価は、これらの原価のうち「実際に売れた分」にかかっている費用を指します。
■粗利益と粗利益率の違いは?
粗利益と併せて押さえておきたいのが「粗利益率(粗利率)」です。粗利益が「いくら利益が出たか」という金額を示すのに対し、粗利益率は「売上高のうち、どれくらいが粗利益として残ったか」を示す割合です。
粗利益率の計算方法
粗利益率は、以下の計算式で算出できます。
粗利益率(%)=(粗利益÷売上高)×100
例えば、売上高が100万円、粗利益が40万円だった場合、粗利益率は以下のようになります。
(400,000÷1,000,000)×100=40%
この場合、売上高の40%が粗利益として残っていることになります。
業種によって粗利益率の目安は異なる
粗利益率は、商品やサービスの収益性を知るうえで役立つ指標です。
ただし、粗利益率の目安は業種によって異なります。代表例は以下の通りです。
| 小売業 | 約29.8% |
| 宿泊業・飲食サービス業 | 約67.2% |
| 生活関連サービス業・娯楽業 | 約40.0% |
自店の粗利益率を見るときは、できるだけ近い業種の数値を参考にしましょう。
粗利益と粗利益率はどちらが大切?
粗利益は「いくら儲かったか」という金額を示す指標、粗利益率は「売上に対してどれだけ効率よく利益を出せているか」を示す指標です。
どちらの指標も大切ですが、粗利益率が高くても、必ずしも粗利益額が大きくはならない点には注意が必要です。
鳥越「まずは率より額のアップを優先するとよいでしょう。例えば、1,000円売って原価率20%なら粗利益は800円ですが、1万円売って原価率50%なら粗利益は5,000円になります。粗利益率は低くても、実際に多くの粗利益を確保できる後者のほうが経営にはプラスといえます」
大切なのは粗利益率だけでなく、実際に手元に残る利益も併せて確認することです。ここからは粗利益率だけにとらわれず、「粗利益を増やすための工夫」を中心に紹介します。
粗利益の改善に着手する前に! まずは準備を行おう
粗利益を上げる際は、「値上げをする」「原価を下げる」といった具体策に目が向きがちですが、やみくもに進めると、お客様のニーズとずれてしまう可能性があります。そこで、具体策に取り掛かる前に確認したいポイントを紹介します。
■誰に売る商品・サービスなのかを確認する
最初に確認するのは、想定するお客様像です。近所の主婦・主夫、通勤途中の会社員、休日に来店するファミリー層など、ターゲットによって重視される価格帯や商品内容が変わります。
「よく来てくれるお客様はどんな人か」「主力商品を買っているのはどんな層か」を振り返ることから始めましょう。
■競合を「お客様の行動範囲」から確認する
競合を確認するときは、近くにある同業店を見るだけでは不十分です。
鳥越「ターゲットになるお客様がどのくらい移動するのかを考えて、その範囲の競合を見ることが大切です。顧客情報を取得できるのであれば、住所をGoogleマップに落として、どの辺りから来ているかを見る方法もあります」
競合店を見るときは、価格だけでなく、商品の品質や量、売れ筋、客層、SNSでの打ち出し方なども確認しましょう。
鳥越「競合店を見るなら、忙しい時間帯に行くのがポイントです。本来、自店で買ってくれそうなお客様が何を買っているのかを見ると、人気商品や価格、ボリューム、品質の違いが分かります」
粗利益アップのための具体策5選
ここからは、小規模店でも取り入れやすい粗利益アップのアイデアをご紹介します。
■①売上アップの工夫をこらす
粗利益を増やすには、原価を下げるだけでなく、売上や販売数を伸ばす工夫も重要です。セット販売やまとめ買い、ポイントカードやクーポンの活用によって、客単価や来店頻度を高められます。
鳥越「原価ばかりに目が向きがちですが、売上を上げる発想も大切です。ポイントカードは来店頻度を上げるための施策ですし、クーポンは売上の増加やロス削減にも活用できます」
■②価格設定を見直す
原材料費や仕入れ価格が上がった場合は、価格設定の見直しも選択肢の一つです。ただし、単なる値上げではなく、ターゲットや競合、地域の相場を踏まえて判断することが大切です。競合や相場より高い価格にする場合は、その理由が伝わる付加価値を示しましょう。
鳥越「希少性やこだわり、品質の良さなど、実はこれだけ価値があるということをPRするのも有効です」
ほかにも限定感や人気商品であることをPOPやSNSで伝えるなど、魅力を見える化することが大切です。
■③商品原価を見直す
粗利益を増やすには、商品原価の見直しも有効です。仕入れ先との交渉や見直し、大量・共同仕入れなどで、仕入れコストを抑えられないか検討してみましょう。
また、原材料の組み替えや歩留まりの改善も重要です。歩留まりは、仕入れた食材や材料のうち、実際に使える部分の割合のこと。捨てていた部分を別の商品に活用するなど、材料を無駄なく使う工夫が粗利益の改善につながります。材料をどれだけ無駄なく使えているかも見直しましょう。
鳥越「大根を1本買っても、葉っぱを落として皮をむくと、使える量は減ります。大根の葉っぱを料理に使うなど、廃棄につながらない工夫もできます」
■④商品構成を見直す
どの商品をどれくらい売るかという「商品構成」の見直しも大切です。まずは売上順に商品を並べ、主力商品を把握しましょう。こうした分析は「ABC分析」と呼ばれます。
鳥越「ABC分析では、売上構成比が高いものを確認し、そこに粗利益率を掛け合わせることが大切です。売上構成と粗利益率を一覧で把握しましょう」
その上で、粗利益率の高い商品をどう販売するかを考えます。例えば飲食店なら、同じ価格のランチがビーフ、ポーク、チキンの3種類ある場合、原価が低いチキンの方が粗利益を取りやすいことがあります。
鳥越「ただし、人気があるのはビーフという場合もあるため、ビーフは数量限定にする、チキンにはデザートを付けるなど、お客様の満足度を下げずに粗利益率と販売構成比を見ながら、うまく組み合わせていくことが大切です」
商品数が多い場合は、カテゴリーごとに粗利益率や売上構成を確認し、粗利益を取りやすい商品を目立つ場所に配置するなどの工夫も効果的です。
■⑤在庫管理を見直す
在庫はロスが発生すると売上原価として計上され、粗利益を圧迫します。そのため、適正在庫を保つことが重要です。
在庫が多すぎると、ロスだけでなく、現金化に時間がかかったり、保管・管理の負担も増えます。売れ筋商品の欠品に注意しつつ、過剰在庫を抱えすぎないようにしましょう。
鳥越「過去最高売上の日に合わせた在庫を、通常時まで持つ必要はありません。近所でイベントがある、お祭りがあるといった特別な日を除き、通常時は発注サイクルを見ながら適正在庫を考えることが大切です」
業種別に見る! 粗利益改善のための、さらなる工夫
ここからは、飲食店・小売店・サービス業など業種ごとの特徴に合わせた、粗利益改善のためのさらなる工夫を紹介します。
■飲食店の場合
大盛りやトッピング、コースメニューなどを用意することで、客単価アップにつなげられます。こだわりを打ち出した限定メニューなど、高価格帯の商品展開も有効です。
■小売店の場合
「2点購入で割引」「関連商品をセットで販売」「おまけ付き販売」などにより、買い上げ点数や客単価のアップを狙えます。プレゼントやおまけを付ける場合は、景品表示法などのルールに注意しましょう。
■サービス業の場合
基本サービスに追加料金のメニューを設けることで、客単価アップにつなげられます。
鳥越「時間の延長や指名料、パーソナルトレーニング、オプションメニューなどを追加する方法も有効です。プラスアルファで乗せていくイメージですね」
業種によっては回数券やプリペイドカード、サブスク型のサービスを活用し、継続利用を促しながら売上の安定化を図るという手もあります。
自店に合った方法で粗利益改善を進めよう
原材料費が高騰するなか、粗利益を増やすには、原価を下げるだけでなく、売上や客単価、価格設定、商品構成、在庫管理まで総合的に見直すことが大切です。
まずは粗利益と粗利益率の考え方を理解し、自店の商品やサービスが「誰に選ばれているのか」「競合と比べてどこに強みがあるのか」を確認しましょう。そのうえで、自店に合った施策を少しずつ取り入れていくことが、安定した店舗経営につながります。
この記事の監修者
金融業、飲食業を経て2003年、(株)ディー・アイ・コンサルタンツ入社。人財開発研究部の担当役員として部門を統括。2012年にDIC 幹部育成コンサルティング(株)を設立し、社長に就任。上場企業からスタートアップ企業まで、飲食・小売・サービス業の店舗マネジメントの仕組みづくり、人財育成に特化したコンサルティングに従事。年間4,000人もの現役店長から相談を受け、これまでに延べ5万人以上の店長の悩み、現場の課題に対して徹底的に取り組んでいる。
著書に『できる店長は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)、『店長が必ずぶつかる「50の問題」を解決する本』(PHP研究所)、プロ店長『最強の仕事術』(日本経済新聞出版社)、『ほめられたいときほど、誰かをほめよう(店長の心を励ます50の言葉)』(プレジデント社)、『実力店長に3ヶ月でなれる100STEPプログラム』(同友館刊)などがある。その他専門誌への連載多数。



