2022年8月時点で事業者が利用できるキャッシュレス決済導入補助金は3つ
キャッシュレス決済をお店で導入する際にかかる主な費用には、以下のようなものがあります。
【キャッシュレス決済の導入費用一例】
・端末導入費用
・決済手数料
・振込手数料
・インターネット通信費用 など
このなかで一番負担が大きいのは「端末導入費用」です。高いもので10万円を超えるケースも少なくありません。また、決済手数料は決済金額に対しておおよそ3~5%かかるのが相場となっており、振込手数料は無料の決済サービスもあります。
お店の負担を最小限にするため、キャッシュレス決済を検討する際にはまず「利用できる補助金がないかどうか」を確認しましょう。2022年8月現在、キャッシュレス決済導入時に利用できる補助金は大きく3つあります。
次からは、それらの補助金の具体的な内容や条件などを見ていきましょう。なお、今回ご紹介する補助金はすべて中小企業もしくは個人事業主が対象の制度となっています。
キャッシュレス決済導入補助金(対象:各自治体内の事業者)
2022年春ごろから各市区町村単位で、「キャッシュレス決済端末等導入支援事業」という制度が実施されています(事業名は自治体ごとに微妙に異なります)。これはキャッシュレス社会の基盤整備を目的とした事業で、これを利用することで端末導入費用などの補助を受けられます。
法人の場合は事業所、個人事業主の場合は住民登録がある自治体に申し込みができ、決済端末やネットワーク接続機器などにかかる費用を補助してくれるのです。なお、すべての自治体が実施しているわけではないので、実施状況については「○○市 キャッシュレス決済補助金」などでネット検索するか、直接役所に問合せすることをおすすめします。
実施期間や補助金額、対象事業者なども自治体ごとに異なります。例えば、東京都北区の場合は、以下のような内容になっています。
対象条件 | ・中小企業、個人事業主 ・北区内に事業所や住民登録があること ・法人税や市民税を滞納していないこと ・対象期間内にキャッシュレス機器を導入すること など |
期間 | 2022年3月1日~2023年2月28日 |
補助対象 | ・キャッシュレス決済端末本体機器 ・汎用端末(タブレット、スマホ、パソコンなど) ・決済端末に関連する機器(バーコードリーダー、レシートプリンタなど) ・ネットワーク接続機器(Wi-Fiルータなど) |
補助金額上限 | 10万円 |
IT導入補助金2022(対象:全国の事業者)
「IT導入補助金2022」は、中小企業や小規模事業者を対象とした補助金制度です。各種ITツール導入にかかる費用の補助を受けることができ、以下の3種類の枠が用意されています。
①通常枠(A・B類型)
②セキュリティ対策推進枠
③デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
通常枠は勤怠管理や販売管理、社内イントラなどのITツールが対象です。セキュリティ対策推進枠は、対象となるセキュリティソフトやサービスの導入・運用費用を補助してくれます。
そして、③の「デジタル化基盤導入枠」は、POSレジや券売機が補助の対象となっています。具体的な補助対象は以下の通りです。
対象条件 | 中小企業、個人事業主 |
期間 | 2022年3月31日~受付締切スケジュールは順次公開 |
補助対象 | ・ターミナル型POSレジ、セミセルフ型POSレジ、セルフ型POSレジ ・PC、タブレット、スマートフォンなどが連動するモバイルPOSレジ |
補助金額上限 | 5~350万円(内容によって異なる) |
補助率 | 1/2~3/4(内容によって異なる) |
なお、対象となるの商品やサービスは、各ITベンダーによって事前登録されたもののみとなっています。具体的な企業やサービス内容は以下で検索ができるので、利用を検討されている方はのぞいてみましょう。
参考:https://portal.it-hojo.jp/r3/search/?_ga=2.221825822.740432264.1660995530-1801064970.1660167204
小規模事業者持続化補助金(対象:全国の事業者)
「小規模事業者持続化補助金」とは、小規模事業者が持続的な経営を行えるよう国が販路開拓や生産性向上の取組を支援する制度です。通常枠と特別枠の申請型があり、特別枠はさらに「賃金引上げ枠」「卒業枠」「後継者支援枠」「創業枠」「インボイス枠」の5つに分かれます。
通常枠では、販路開拓や生産性向上の取り組みの一環として、お店のキャッシュレス化にかかわる費用の補助を受けられる可能性があります。なお、この補助金は商工会・商工会議所のサポートを受けながら計画書を作成・申請し、審査通過を経て所定の補助を受けられる仕組みとなっています。
機械装置等費、広報費、旅費、開発費など、対象となる補助対象経費科目が幅広いため、この制度を使ってキャッシュレス決済導入の費用補助を考える場合にはまず地元の商工会や商工会議所に相談してみるといいでしょう。
対象条件 | 中小企業、個人事業主 |
期間 | 第9回受付締切日 2022年9月20日 第10回受付締切日2022年12月上旬 第11回受付締切日2023年2月下旬 |
補助対象 | 小規模事業者自らが作成した経営計画に基づき、商工会・商工 会議所の支援を受けながら行う販路開拓等の取組(機械装置等費、広報費、旅費、開発費などの補助対象経費科目が設けられている) |
補助金額上限 (通常枠) |
50万円 |
補助率 (通常枠) |
2/3 |
キャッシュレス決済導入の補助金を利用する際の注意点
今回ご紹介した補助金はすべて融資ではないため、返済不要の資金です。経営資源が潤沢ではない中小企業や個人事業主にとって、これほどありがたいことはありません。
ただそのぶん、補助金の審査は厳しいものとなります。しっかりとした事業計画を提出しなくてはならず、申請書や計画書の作成に多くの時間がかかることは理解しておきましょう。
また、補助を受けることで「地域や社会にこれだけの貢献ができる」というアピールも欠かせません。例えば、小規模事業者持続化補助金の申請ガイドブックには、審査のポイントとして以下のような内容が記載されています。自店舗にとってだけでなく、「補助金を出してもらうことで社会全体にもメリットがある」ということをロジカルに説明できれば、審査通過しやすくなるでしょう。
審査のポイント
○自社の経営状況を適切に把握し、自社の製品・サービスや自社の強みも適切に把握しているか。
○経営方針・目標と今後のプランは、自社の強みを踏まえているか。
○経営方針・目標と今後のプランは、対象とする市場(商圏)の特性を踏まえているか。
○補助事業計画は具体的で、当該小規模事業者にとって実現可能性が高いものとなっているか。
○補助事業計画は、経営計画の今後の方針・目標を達成するために必要かつ有効なものか。
○補助事業計画に小規模事業者ならではの創意工夫の特徴があるか。
○補助事業計画には、ITを有効に活用する取り組みが見られるか。
○補助事業計画に合致した事業実施に必要なものとなっているか。
○事業費の計上・積算が正確・明確で、真に必要な金額が計上されているか。
消費者向けのキャッシュレス決済キャンペーンをきっかけに導入するのも◎
「補助金の利用が難しそう」「事業計画を作成するのはちょっと…」という場合は、消費者向けのキャンペーンをきっかけにお店のキャッシュレス化を進めてみてはいかがでしょうか。
近年、自治体主導、商店街主導など、全国各地でさまざまな消費者向けのキャッシュレス決済キャンペーンが実施されています。例えば、東京都江東区商店街連合会では2022年10月に「キャッシュレス決済ポイント還元キャンペーン」を実施する予定となっています。対象店舗でau PAYや楽天ペイなどのキャッシュレス決済を利用すると消費者に対して30%が還元されるという内容です。
お店側に補助はありませんが、こういった消費者向けキャンペーンをきっかけにしてキャッシュレス決済を導入するのもいいでしょう。キャンペーンの受け皿になることができ、売上アップや新規顧客の獲得が期待できます。
【店舗向け】<令和4年10月実施 キャッシュレス決済ポイント還元キャンペーン>参加店の募集について【8月17日更新】 – 江東区商店街連合会
https://ko-syouren.jp/blog/2022/06/27/%E3%80%90%E5%BA%97%E8%88%97%E5%90%91%E3%81%91%E3%80%91%EF%BC%9C%E4%BB%A4%E5%92%8C4%E5%B9%B410%E6%9C%88%E5%AE%9F%E6%96%BD-%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%AC%E3%82%B9%E6%B1%BA/まとめ
経産省によれば2021年の日本のキャッシュレス比率は32.5%となっています。5年前の2016年には20.0%だったため、キャッシュレス化は日々進んでいます。ただし、政府が目指すのはキャッシュレス比率80%なので、その意味ではまだ道半ばといったところです。
そして、キャッシュレス比率の目標達成のために、今回ご紹介したような補助金が用意されており、事業者にとってはこれを利用しない手はありません。ぜひ積極的に補助金を活用して、キャッシュレス化を進めてみましょう。
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