飲食店の電気代はどれくらいかかっている?

まずは、飲食店で電気代がどのくらいかかっているのか、また、電気代が店舗経営にどのような影響を与えるのかを把握しましょう。
■飲食店における電気代の負担とその傾向
飲食店において、電気代は売上高の約7%前後を占めると言われており、経営に大きく影響するコストのひとつです。業態や規模によって幅はありますが、目安としては、喫茶店では月に1.5〜4万円、居酒屋では5〜10万円程度の電気代がかかるとされており、その負担は決して小さくありません。
近年では、電気料金の単価が上昇していることに加え、原材料費や人件費といった他のコストも高騰しています。その結果、電気代を含む固定費全体の見直しが課題として意識されるようになっています。
利益を圧迫する要因が増えるなか、まずは固定費である日々の電気代を見直すことが、効率的なコスト削減と経営の安定化につながりそうです。
■電気代が店舗経営に与えるインパクト
飲食店では、売上が落ちても電気代のような固定費は減りづらいため、経営にとって大きな負担となります。特に売上が不安定な時期には、こうした固定費が利益を圧迫し、メニューの価格設定や営業時間といった営業方針にまで影響を及ぼすケースも少なくありません。
そのため、電気代の見直しは、単なる節約だけでなく、経営全体の利益率を改善する重要なカギとなります。無理なく固定費を抑えることができれば、経営を安定させ、店舗の持続的な成長にもつながっていくでしょう。
なぜ飲食店の電気代は高くなりがちなのか?

店舗では設備の稼働状況や運用管理の工夫次第で、電気代に大きな差が出ることがあります。ここでは、電気代の負担が大きくなる代表的な要因について見ていきましょう。
■管理不足によって電力が無駄に使われている
飲食店は営業時間が長く、照明や空調の稼働時間も延びてしまう傾向があります。さらに、閉店後にも照明の消し忘れや機器の電源切り忘れといった見えにくい無駄が積み重なり、電気代を押し上げてしまうケースが少なくありません。
特にバックヤードやトイレなどの目が届きにくいエリアでは、照明が常時つけっぱなしになりがちです。小さな管理の甘さが積み重なることが、結果的に長期的な電力ロスを招く原因となります。まずは日常業務の中に潜む無駄に気づき、当たり前の運用を見直すことが、省エネとコスト削減の第一歩となるでしょう。
■空調設備に高い負荷がかかっている
飲食店は、厨房の熱気や冷蔵設備の稼働などによって、店内全体が常に高温・高湿の環境になりやすく、空調機器がフル稼働する状態になりがちです。こうした環境は、空調の使用時間や出力を自然と引き上げ、消費電力を増やす要因となります。
さらに、エアコンのフィルターに汚れがたまっていたり、室外機のまわりに物が置かれて通気が悪くなっていたりすると、冷暖房の効率が下がり、消費電力はさらに増加してしまいます。気づかないうちに電気代がかさんでいることもあるため、これらの要因の把握が無駄なコストを防ぐ第一歩となります。
■設備や契約が店舗に合っていない
電気代の見直しを考える際、見落とされがちなのが「店舗に合った設備選び」や「電力契約の適正化」です。たとえば、初期コストや工事の手間を理由に、白熱灯や蛍光灯などの消費電力が高い旧型照明を使い続けてはいませんか。
また、契約している電力プランが実際の使用量や営業時間帯に合っていないと、本来より割高な料金を支払ってしまうこともあります。まずは自店の状況と照らし合わせて、過不足がないかを確認することが大切です。
今日からできる!電気代節約術

電気代を抑えるためには、日々の小さな工夫や見直しの積み重ねが大切です。ここでは、今日からできる電気代節約術をご紹介します。
■日々の電気の使い方を見直す
まずは、毎日の電気の使い方を少しだけ意識して見直してみましょう。
たとえば、店内の照明は、お客さまがいないエリアでは一部を消すなど、必要な場所だけを明るくするように意識しましょう。客足の少ない時間帯には、自然光を活かした照明に調整することも有効です。
加えて、閉店時には「消灯・切電チェックリスト」などを導入し、スタッフ全員で無駄な電力の使用を防ぐ仕組みを設けると、習慣化もしやすくなります。こうした細やかな工夫の積み重ねが、最終的には大きなコスト削減につながるでしょう。
■空調設備を適切に管理・運用する
飲食店では、空調機器による電力使用の割合が特に大きいため、その管理と運用を適切に行うことが、電気代削減に直結します。まず基本となるのは、エアコンや冷蔵機器のフィルターを定期的に清掃することです。フィルターにホコリや油汚れがたまると、冷暖房の効率が落ちて余計な電力を消費してしまいます。また、室外機の周囲に物を置かない、風通しを確保する、直射日光を防ぐための日よけ対策を行うといった工夫も、機器の負荷を軽減し、無駄な電力消費を防ぐポイントです。
さらに、空調の設定温度も見直しが必要です。夏場は28℃、冬場は20℃を目安にすることで、過度な冷暖房を避けながら、電力使用を抑えることができます。
■LED照明へ変更する

白熱球や蛍光灯を一括でLEDに交換するだけでも、消費電力を大幅に抑えることができます。
経済産業省の試算によれば、68Wの蛍光灯を34WのLED照明に取り替え、年間2,000時間使用した場合、年間で約2,100円の節約につながるとされています。LED電球は蛍光灯より初期費用がやや高いものの、約6ヶ月で元が取れる計算となっており、短期間でも十分にコスト回収が可能です。
さらに、長期間にわたって使用した場合も、消費電力の低さや交換頻度の少なさから、LEDのほうが大幅にコストを抑えられるとされています。寿命が長いため、交換作業や在庫管理の手間も削減でき、店舗運営の効率にも貢献するでしょう。
■契約中の電力会社・プランを見直す
見落とされがちですが、電力会社との契約内容を見直すことも、電気代削減につながる有効な手段のひとつです。2016年の電力自由化以降、飲食店でも地域の電力会社に限らず、さまざまな電力会社の中から契約先を自由に選べるようになりました。
現在の電気代やサービス内容を確認し、複数の電力会社と比較してみることで、より店舗に適した料金プランが見つかる可能性があります。特に、昼間の営業が中心か、夜間の営業が中心かなど、電力の使用状況に応じたプランを選ぶことは、電気代の最適化に効果的です。まずは現在の契約内容と使用状況を把握し、自店に合ったプランがないかチェックしてみましょう。
店舗オペレーションの見直しで無駄な電力をカット

日々の営業スタイルを見直すことも、省エネにつながる有効な手段です。うまく工夫すれば、電力の無駄を減らすだけでなく、サービスの質を高めることにもつながります。
■営業時間・営業スタイルを柔軟に調整
電気代を抑えるには、電力の使い方だけでなく、そもそもの店舗営業のスタイルを見直すことも重要です。曜日や時間帯ごとの来店状況を分析し、集客が少ない時間帯を明確にすると、その時間帯の営業を短縮するという判断もできるようになります。
たとえば、平日の昼間に来店が少ない場合は、営業時間を一部短縮するか、照明や空調を最小限に抑えた省エネ営業に切り替えるといった工夫が考えられます。営業スタイルを柔軟に調整することで、無理なくコストを削減し、生産性の高い営業体制にすることができます。
■仕込み・清掃スケジュールの最適化
仕込みや清掃は営業外に行うことが多いため、その間も照明や空調を使い続けていると、気づかないうちに電力ロスが発生してしまいます。こうした無駄を減らすには、作業スケジュールの見直しが効果的です。
たとえば、来店の少ない時間帯に仕込みや清掃を組み込めば、営業外の時間帯に空調や照明を稼働させる時間を減らすことができるでしょう。作業時間を営業中にうまく重ねることで、電力の使用時間そのものを短縮でき、電気代の削減につながります。
こうした段取りの工夫が、日々の電気代の削減に大きく影響します。業務効率と省エネの両面を意識して、スケジュールを最適化してみましょう。
レジ周りの省力化で節電&効率アップ

レジ周りの無駄を減らすことは、省エネと業務効率の両方に効果的です。キャッシュレス決済の導入は、一般的に「利便性向上」や「人手不足対策」として注目されがちですが、省エネ効果も期待できる取り組みなのです。
たとえば、au PAYのようなキャッシュレス決済を活用することで、現金の受け渡しや釣り銭の準備といった作業が不要になるため、レジを使用する場合と比べ、会計処理がスムーズになります。JCBが行った決済速度に関する実証実験では、レジ対応の時間が約1/3に短縮されるという結果が示されています。会計時間が短くなることで、混雑の緩和や顧客の回転率向上にもつながる可能性があり、結果として間接的に空調や照明の稼働時間を抑えられることも考えられます。
さらに、現金精算やレジ締めといった閉店作業も短縮されるので、営業時間終了後の電力使用も抑えられるようになります。こうしたレジ周りの省力化は業務効率を高めるだけでなく、省エネ施策としても有効な手段となるかもしれません。
日々の見直しで、無理なく電気代を削減しよう
電気代の高騰が続く中、飲食店では、電力コストを適切に見直すことが経営の安定に欠かせない取り組みとなっています。照明や空調の使い方に加えて、設備のメンテナンスや契約プランの見直し、日々のオペレーション改善といった小さな工夫の積み重ねが、着実なコスト削減につながるでしょう。まずは取り組みやすいところから、無理なく続けられる対策を見つけ、安定した店舗経営につなげていきましょう。